1月24日大腿骨頚部骨折の顛末2012/02/03 15:11

2012年1月23日

関東地方に今年初の大雪が降り続いた。我が家の前の道路は真っ白、明日は車のタイヤはスタットレスだけど朝の凍りついた道を安全に運転できる自信はないから、電車で行こうと準備に入った。

最初に、靴、迷わず登山靴を選択した。服装はジーパンにゴルフ用ジャンパーさらに襟巻き、サッカー用手袋を用意した。

 

2012年1月24日

迎えた朝、少しの雪でも首都機能がマヒするのが常だが、東武線は日光を抱えているので割合と雪には強いので安心だ。通勤ルートは武蔵野線経由の平和台。

 平和台駅に到着すると雪は解けはじめていて道路は雪と氷と水溜りにアスファルトの島が点在している状態。慎重に歩き始め普段10分程度の道のりを20分かけて事務所の入り口まで到着。悲劇は突然やって来た。事務所のビルを見上げた瞬間に体の重心が後ろに移り、両かかとから猛スピードで回転し左腰(お尻付近)を硬いアスファルトに叩きつけられた。

 すぐに立ち上がろうとしたけど、足が動かない!何かおかしい?それでも、何とか立ち上がり目の前にある事務所の入り口までたどり着いた。

 

オガタクリニック

机の前に座ったが左の足が重く動かない。同僚がオガタクリニックを近いので進めてくれたので行くことにした。

レントゲンを撮った、結果は「大腿骨頚部骨折」普通80歳過ぎの人がよく折るらしい?何故?ま~人生の運命とは何故がつきものだからこの程度のことは不思議でもなんでもない。

でも困ったことに、ここの病院には入院手術設備がないのでどこか紹介するという、それでは自宅近くの病院がいいということと生活習慣病で毎月診てもらっている「秀和総合病院」に尾形先生自ら電話を入れてくれた。

事務所の女性達にはすぐに裸にするエロ医師とすこぶる評判が悪いけど、このときの対応は一流だった。

病院側はすぐに受け入れ態勢を整えてくれ、私の到着を待った。私はタクシーに乗り外環を使って約50分程度で病院に着いた。

 

手術室

天井の明かりが右へ左にと流れていく、やがて大きな部屋にたどり着いた。ストレッチャーに乗せらたまま手術室に入る。

円盤のような無影灯の下にミズホの手術台がある。見覚えのあるものだ。デザインの仕事でこのシリーズのデザインを担当したことがあるけど。そこに乗るのは初めてだ。

大勢の看護師さんやら先生方が私の顔をぐるり取り囲んでいる。いろいろ話かけてくれけど、すべて生返事、ここまできて逆らう勇気はさすがにない。

白い大きなシーツ状の布をかぶせられた。それが何か安心感がある。

体を横向きされ、猫のように丸めての指示があり、丸めるけど体が堅いからなのか更に丸めるように言われる。でも限界だ!生まれたての赤ん坊のようにはならない。ターミネーターのシーンを思い浮かべた。イントロ部だったと思うけど、ターミネーターが全裸で体を丸めた状態で地球上に降り立ってくるシーンだ。

やがて、背中をアルコールで拭き始めた。何回も何回も拭いては手で場所を確認しながら、ずいぶんと丁寧だ!だけど何も起こらない。慎重なのかな?それが繰り返されて、いつしか下半身麻酔を脊髄に注射するのだ。少し痛かったけど、何回かするうちわからなくて、深い眠りに陥ってしまった。

 

集中治療室

手術から目が覚めると、目の前には恐ろしい形相で、いきなりあなたが今おかれている状況を理解しているか?浅黒く丸顔の看護師が私に注意を浴びせてくる。

何のことか理解できないでいると、昨夜私が言ったこと覚えている?覚えているならその格好はなによ!

枕をして右向きに寝ている格好を注意しているのだ。しかも枕は足枕専用のものらしい。

けれども何も覚えていない、看護師の言い分は麻酔のかかった状態で頭を高くして寝ると「吐き気・めまい」などが発生し大変らしい。

だけど何もなかったのだけど、昨夜の私の状態は人の話を理解する能力はなかったと思う。私の言い分としては、看護師は患者が話を理解しているかどうか確かめるべきじゃないかな?と思うと、情けなくなってきた。

 しかし、最悪だったのはその夜一緒だった別の患者である。その患者のため一睡もできていなかった。痛みのせいではないのだ。

 

隣の患者が「すいません!私は手が動かせないのでナースコールを押してくれませんか?」と何度も懇願するので哀れに思い、ナースコールを押すと、凄く若そうな看護師がやってきて、なにやら話し込んでいる。もちろんカーテンの向こうなので顔も状態も見えない。話の内容から理解するしかないから自然と聞き耳をたててしまう。

「患者」

ドラえもんの手袋を外してくれないか?

「若い看看護師」

だめ!

「患者」

I phoneを家の人持ってきてもらうように頼んでいる。しかも夜中である

「若い看護師」

先生の許可がないとダメ!

「患者」

電話をするんじゃないくて音楽を聴きたいのでお願い?

「若い看護師」

その手じゃボタン押せないよ

「患者」

だから、ドラえもんの手袋を外してくれ!この野郎!外さねーと殺すぞ!外せ!いいから外せ!くそ野郎!外せ~外せー!

「若い看護師」

たまらなくなったらしく、ドアを開けて出て行く音がする。

 

暫くするとまた別の看護師がやって来て静かに話しかけている。どうやらベテラン看護師らしい、患者はまるで母親に甘えるような言動である。お願いだから少し自由になるように腕の紐を外して欲しいといっている。

あれ!縛られているのか?ベッドに?しかもドラえもんの手袋もさせられた上に?

看護師さんとの話は続く、

「患者」

あした炭酸飲料を飲んでいいか

「別の看護師」

先生が炭酸飲料の許可はもらっているのでいいよ!

「患者」

患者は嬉しそうに声を出した。

暫くはたわいのない話が続いていた、平和なひと時だ。

だが、そんなムードもやがて一変する。

すぐに飲みたい衝動に駆られたのか、大騒ぎで早く持って来い!早く!早く!早く~!早く持ってこねーと、ぶっ殺すど~!足をバタバタさせている。

ベテラン看護師もたまらなくなって出て行ってしまった。

 

沈黙は数分続いた。だけど患者はしおらしい声で「お願いします~。お願いします~。お願いします~。」と叫ぶが何の返答がない。

しかし粘り強い患者は更に大きな声でお願いします~。お願いします~。私は心の中でうるせー!この野朗、静かにしろ」と相手に聞こえないように叫んでいる。もし相手が怖い人だったらと思うと

怒鳴り返せない。情けない!

早く看護師さんがきてくれないとこっちも叫びたくなるよ。

あまりにもうるさく叫ぶものだから、今度はまた違う看護師さんと医者が来た。

さすがに医者には逆らわない。会話から察すると、患者の頭を固定するように金属製の金具が取り付けているらしい。年齢は30歳ぐらいで、職業は警備員とのことらしい。どうやら脳梗塞で倒れて運びこまれたらしけど、どうやら一週間ぐらいその状態らしい(患者の話しだけど)若いのにかわいそうにと一瞬、同情してしまった。

  

それから、子供じみた嘘話がはじまった。昨夜会社の上司からメールが携帯に入っているので、持ってきてくれるようにお願いしている。だけれども先生は流石にだまされない。

 患者もあっさりあきらめる。そう思わせたのは一瞬で部屋からだれもいなくなると、同じパターンがくりかえされる。

 

お願いします~。お願いします~。お願いします~。」と叫びはじめる。今度はすぐには誰も来ない。これがまた問題で私にナースコールを押すように頼んでくる。

 今度はこっちも流石に頭にきているから、俺も動けね~んだと、と わざと渋い声で言ってやった。

すると相手は以外にも、すいません?と謝ってくる。あれ!案外と気の弱いやつかもしれない。

だけど、繰り返し繰り返し叫び声は朝まで続いた。

 おかげさまでこの騒ぎが一晩中続き、足の麻痺のことは随分と忘れ去ることができた。

 


 

やがて朝を迎える

 下半身がコンクリートで固められたように動かない、感じない!腰から上は動いているから物凄く不自然な感覚だ。だけど、その状態も明るくなるにつれ引いていくのがわかる。麻酔が切れ初めているのだ。

喉はカラカラだ水も飲ませてもらえないお腹もすいてきたたまらなく、こんなにお腹をすかせたのはなかった。朝食が待ち遠しい。

看護師がきたので尋ねる。朝ごはんは何時ですか?8時ですと答える。で、今は何時ですか?5時です。

がーん!我慢できない!我慢できない!我慢できない!まるで隣の患者と変わらない。水も飲めないとなると脳梗塞なってしまう!

 

待ち遠しい朝食が運ばれてきた。乳白色のトレーに陶器風のプラ製の湯のみ、プラ製のどんぶりが2つ、牛乳パックだけのシンプル構成だ。

最初に牛乳に手をつける。うまい!ここまでは良かった。

次に少し小さめなどんぶりを開けると白米だ、大きめのどんぶりには野菜の煮物、これをおかずにご飯を食べ始めたけど、煮物には味がない、白米はネチネチした感じで、今まで期待していた事がすべて裏切られてしまった。

早く脱出しなければならない!明日主治医にいつ退院できるか相談しよう。それが唯一の楽しみ変わった。


コメント

_ シェラです。 ― 2012/02/05 16:12

大丈夫ですかぁ~?!
お大事にです。

_ 工房464 ― 2012/02/06 10:50

シェラさんコメントありがとうございます。
治療の方は最初はよかったのですが、調子に乗りすぎて、いまは大人しく自宅安静中です。

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