愛犬ブレ2013/03/06 17:25

第一章

1998年5月13日に駅前で子犬を貰う

世の中が実体の無い景気に浮かれているバブル真っ盛りだったようなきがする。ビンラディンが率いるテロ組織がニューク世界貿易センタービルに民間機で自爆攻撃する3年前だ。ほろ酔い気分でいつものように、駅から自宅に歩いて向かい始めた。歩き始めて直ぐに道端に立つ女性たちからの熱い視線と呼び声が入ってくる。ここは県北部に歓楽街を有している街なのだ。

 

突然路上で呼びかけられた、それも進行をさえぎるかたちで、しかも素人風の20代の女性からだ、「あの~犬をかってくれませんか?」少し酔っているし、直ぐには何のことか判断できない、だから、咄嗟にお金持っていなし買えないよと返事を返した。  

当時、今もそうかもしれないが、子犬一匹2050万円はする時代だ。しかも、3年前には可愛がっていたポメラニアンが亡くなっていて、家内は二度と犬は飼わないと公言していたのを知っている。先を急いでいるふりをして振り切ろうとしたけれど、悲しそうな目つきで、違います!!貰って欲しいのです!と懇願する。

え!貰って欲しいって言っても何も見当たらない。するとその子が指し示した先をみると大きなダンボールの中になにやらうごめいている。艶々した黒い塊りが3個震えている。更に茶色い毛玉が3個うごめいている。恐る恐るダンボールに近づくにつれ僅かな体温が顔に感じられる。手でそっと触れると生暖かい湿った体温が伝わってくる。だめだ!頭の中に家内の顔が浮かび、その先に進めてくれない。それでも小さな暖かく湿った物体は私の手を舐め始める。咄嗟に一個の物体を抱きあげてしまった。両手に乗せると、すべての体重を委ねてくる。小さく震えて私の本能に訴えかけてきた。自然に言葉を出していた。一匹、貰うかな?

えっ!突然回りの音が消えた!静まり返ったこの空気はなんだ。何かマヅイことでも言ったかな?すると頭の上の方から、え~ホント! 同時にカンカンカンカンと鉄板製の階段を駆け降りる音、今度は息を切らしたメイクの濃い女性が目の前に立ち、ホントに飼ってくれるんだったら、この子にして!お願い!!なんと,お店の前で子犬を何時間も抱いていたらしい、ダンボール箱の中で体が一番小さくて仲間はずれになっていた黒い子犬だった。 

そこの場所はナイトパブエックスの入り口階段前だ、たちまちメイクの濃いお嬢さんや素人のお嬢さんやらに囲まれてしまった。もう後には引けない、家内をどう説得するかぐるぐると頭の中が空回りしている。

そんな事情なんてかまわずに子犬の体温と香水の香りに説得させられて。コートのポケットの中には子犬が一匹入っていた。

心配しながら覚悟を決めて家のドアをあける、やはり、怒った顔の女性がいる。床に子犬を静かに置くとまだ目も開けきらずにいるのに家内の方に近寄っていく。怒った顔つきが困った表情に、すると踵をかえしコンロに向かい残りのスープを温め始めた。そして残り物のパンをスープに浸し子犬に与え始めた。子犬の勝ち!!と心の中で叫んだ!

そうして子犬は我が家の一員になった。名前はブレーン(略してブレ)。

次回第二章を書くつもりです。

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